「縁を生かす」 その二
クリスマスの午後だった。
少年が小さな包みを先生の胸に押し付けてきた。
あとで開けてみると、香水の瓶だった。
亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。
先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。
雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。
「ああ、お母さんの匂い! 今日はすてきなクリスマスだ」
六年生では先生は少年の担任ではなくなった。
卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして、いままで出会った中で一番すばらしい先生でした」
それから六年。またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。 僕は五年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。
おかげで奨学金をもらって医学部に進学することが出来ます」
十年を経て、またカードがきた。
そこには先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた体験があるから患者の痛みが分かる
医者になれると記され、こう締めくくられていた。
「僕はよく五年生の時の先生を思い出します。あのままだめになってしまう僕を救ってくださった
先生を、神様のように感じます。
大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、五年生の時に担当してくださった先生です」
そして一年。届いたカードは結婚式の招待状だった。
「母の席に座ってください」
と一行、書き添えられていた。 _________鈴木秀子
定員300名をオーバーするたくさんの参加者でした。
終了後は殆どの方が3階からエレベーターを使わず、階段室の方に向いました。
階段の降り口まで進むと、スーツを着た人が立っています。
近づくと帰る人達一人一人に、声を掛けて握手をしています。
「おおきに!」
「頑張ろうや!!」
何とその人は、さっきまで声を嗄らして講演しておられた「千房」の中井社長でした。
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