2010年09月10日
「縁を生かす」 その二
クリスマスの午後だった。
少年が小さな包みを先生の胸に押し付けてきた。
あとで開けてみると、香水の瓶だった。
亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。
先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。
雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。
「ああ、お母さんの匂い! 今日はすてきなクリスマスだ」
六年生では先生は少年の担任ではなくなった。
卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして、いままで出会った中で一番すばらしい先生でした」
それから六年。またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。 僕は五年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。
おかげで奨学金をもらって医学部に進学することが出来ます」
十年を経て、またカードがきた。
そこには先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた体験があるから患者の痛みが分かる
医者になれると記され、こう締めくくられていた。
「僕はよく五年生の時の先生を思い出します。あのままだめになってしまう僕を救ってくださった
先生を、神様のように感じます。
大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、五年生の時に担当してくださった先生です」
そして一年。届いたカードは結婚式の招待状だった。
「母の席に座ってください」
と一行、書き添えられていた。 _________鈴木秀子
定員300名をオーバーするたくさんの参加者でした。
終了後は殆どの方が3階からエレベーターを使わず、階段室の方に向いました。
階段の降り口まで進むと、スーツを着た人が立っています。
近づくと帰る人達一人一人に、声を掛けて握手をしています。
「おおきに!」
「頑張ろうや!!」
何とその人は、さっきまで声を嗄らして講演しておられた「千房」の中井社長でした。
2010年09月10日
「縁を生かす」 その一
~ナニワの名物社長の涙と感動の物語~
日本一のお好み焼き専門店「千房(チボー)」の社長の講演を、9月6日(月)福岡商工会議所で聞くことができました。
まさしく泣いたり笑ったり、感動したり励まされたりと、とても充実した2時間でした。
社会教育家として青少年の教育に力を入れておられる中井社長が、
涙ながらに読み上げられた言葉の件(くだり)が、偶然にもその日の新聞に載っていました。
それは人間学を学ぶ月刊誌「月刊致知」2005年12月号に掲載された文章でした。
「縁を生かす」
その先生が五年生の担任になった時、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。
中間記録に先生は少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。
ある時、少年の一年生からの記録が目に留まった。
「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。
間違いだ。他の子の記録に違いない。先生はそう思った。
二年生になると、「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていた。
三年生では「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りする」
三年生の後半の記録には「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」とあり、
四年生になると「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子どもに暴力をふるう」
先生の胸に激しい痛みが走った。
ダメと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に
立ち現れてきたのだ。
先生にとって目を開かれた瞬間であった。
放課後、先生は少年に声をかけた。
「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?
分からないところは教えてあげるから」
少年は初めて笑顔を見せた。
それから毎日、少年は自分の机で予習復習を熱心に続けた。
授業で初めて手をあげた時、先生に大きな喜びがわき起こった。
少年は自信を持ち始めていた。
(その二へ続く)
私たち、㈲リード・クリエーションの名刺の裏には
Our creative ideas and passion shall lead you to a successful expression of your dreams
私たちの独創的な発想と情熱はあなたをあなたの夢を成功へと導くものとします。(直訳)
と書かれています。